おえぁ? れれぁいぇう?

ブログ名思いつかないので仮です

そもそも紅茶は発酵していない

緑茶と紅茶の原料はどちらも「チャノキ」であることは今となってはよく知られているとは思います。あとウーロン茶も。

この3種類を分ける基準として「茶葉の発酵度合」があります。

緑茶は発酵させず(不完全発酵)、ウーロン茶は茶葉が発酵によって黒くなっていく途中で止めます(半発酵)。

そして紅茶はというと、茶葉を十分に発酵させて作ります(完全発酵)。

つまり紅茶を生産するにあたり「発酵」は欠かせないものなのです。

しかし、今の説明だけではあらぬ誤解が生まれてしまうのではっきり言いましょう。

「紅茶は発酵食品ではありません」

 

発酵食品の「発酵」と紅茶の「発酵」は全くの別物

発酵食品と言えば、牛乳から作られるヨーグルトやチーズを筆頭に納豆、味噌、キムチ、鰹節などがあります。飲み物であればおそらくほとんどの酒類、そしてプーアル茶(熟茶)が発酵食品となります。

しかし紅茶はこの中には入りません。なぜでしょうか?

実は18世紀イギリスの食品安全法で全ての飲食店で発酵食品の提供が禁止され……というのは全て嘘です。

発酵とは

発酵食品において「発酵」とは、微生物が食品の成分に化学変化を起こし、別の無毒(・・)な成分へ変えることを指します。

このとき、有毒な成分が生み出されてしまうものが「腐敗」です。

ちなみに私の特に好きな発酵食品は味噌と鰹節。あと納豆と塩辛。好きな腐敗食品は特にありません。

紅茶は「酸化」している

紅茶を解説する書籍やウェブページを調べても、紅茶の発酵を詳しく書いていないことは少なくありません。または「酸化発酵」と書かれていたりするのですが、残念ながら、酸化発酵は先ほど説明した発酵のうちの一種類を指す言葉なので、紅茶クラスタ外では伝わらない言葉です。

紅茶は発酵でも、酸化発酵でもありません。

紅茶は単なる「酸化」です。

鉄が錆びるアレです(茶葉の発酵と同列なのかは微妙)。

茶葉に含まれるカテキンが、同じく茶葉に含まれる酸化酵素によって酸素と反応し、複数のカテキン(タンニン)が結合して重合カテキンへ変化しているのです。

この化学変化に微生物は全く関与していません。

そのため、紅茶は発酵していると言えないのです。

また、この時生成される重合カテキンは紅茶特有の水色成分でもあります。

同じ反応をするものの例として、切ったリンゴが時間とともに茶色く変化するのも同じ「酸化」です。

リンゴに含まれるポリフェノール*1が空気中の酸素と反応して茶色くなるわけですね。なのでリンゴは切った後すぐに塩水につけるのです*2

発酵しているから健康にいいわけではない

発酵食品は健康に良いとよく言われますが、必ずしも当てはまらないというのは上のほうで挙げた酒類が全て物語っていると思います。

そして紅茶も、酸化(発酵)したからといって特別な健康効果が生まれるわけではありません。

ポリフェノールは酸素が大好きらしい

カテキンが属するポリフェノールには強い抗酸化作用が認められています。ポリフェノール自身が酸化しやすいため、他の物質の身代わりになってくれているということです。

酸素が含まれ、なおかつ化学反応を起こしやすい不安定な物質を「活性酸素」と呼ぶのですが、体内の活性酸素が多すぎると細胞障害性*3を発揮し、がんの原因になります。

ポリフェノールは持ち前の抗酸化力で、活性酸素が細胞へ働きかける前に自身と結合させ、酸素を安定化させるのです。

これは酸化によって生まれた重合カテキンにも当てはまります。彼らポリフェノールはめっちゃくちゃ酸素が大好きなのです。

紅茶の健康効果はプラセボなのか

しかし、残念ながら全てのポリフェノールが同じように機能するとは限りません。ポリフェノールの中には縮合型タンニンというグループがあり、これらは生体内に吸収しづらいため、抗酸化作用を生体内で活かすことができません。

そして紅茶に含まれる主なタンニンは縮合型タンニン*4です。

生体内へ吸収されないにも関わらず、なぜ健康効果があるのか、ポリフェノールの酸化機序も含め、あまり研究が進んでいないようです。

私としては、抗酸化作用が直接体内で働くというより、鉄分の吸収阻害や収斂作用も関わっている気がしますが、実際のところ紅茶になぜ健康効果があるのかは謎です。

緑茶の抗酸化作用は納得できる

対して、緑茶には主に4種類のカテキン*5が含まれており、これらは紅茶の縮合型タンニンと違って比較的生体内に吸収されやすい成分です。

そのため、紅茶と比べて抗酸化力を活かした健康効果も納得できます。

たまに気になるからいつか呼ばれなくなればいいなあ

紅茶が発酵食品ではないこと、そして健康効果も機序があまり分からないところまで語りました。

しかし、少なくとも悪い飲み物ではないです。ただし歯の黄ばみには注意

特筆したポリフェノール以外にも、紅茶にはカフェインやテアニンといった精神安定に寄与する成分もあります。集合型タンニンだって、きっと作用しているから健康効果といった話が上がるのです。きっとそうです。

ただ、紅茶の製造過程においての「発酵」と本来の意味である「発酵」をひとまとめにしないよう、気を付けていきたいですね。ていうか発酵じゃなく酸化と言うようになってくれ。

*1:カテキンや重合カテキンポリフェノールの一種

*2:塩分が酸化酵素の働きを抑制する

*3:細胞に対して悪い影響を与える性質

*4:テアフラニン,テアルビジン

*5:エピカテキン,エピガロカテキン,エピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート